AI時代、葬儀社は何をもって選ばれるのか―「AI・検索・広告の未来」セミナーに参加して―

先日、船井総合研究所主催の「AI・検索・広告の未来」セミナーに参加しました。私が最も強く感じたのは、AIの進化によって、葬儀社がお客様から選ばれる仕組みそのものが変わり始めているということです。

私は30年近く葬儀業界に携わり、独立して26年になります。中国での葬祭用品の生産にも早くから取り組んできましたが、当時も新しい仕組みに対する不安や抵抗がありました。しかし、時代の変化は待ってくれません。今回のAIも、単なる技術革新ではなく、業界の競争構造を変える転換点になると感じています。

特に印象に残ったのは、検索のあり方が変化していることです。これまでは「地域名+葬儀社」と検索し、表示されたホームページを比較するのが一般的でした。しかし今後は、「母が亡くなった場合、費用を抑えながら丁寧に見送れる葬儀社はどこか」とAIに相談し、その回答を参考に選ぶ人が増えるでしょう。

ここで思い出すのが、経済学者ハーバート・サイモンの「情報の豊かさは注意の貧困をもたらす」という言葉です。情報が増えるほど、人はすべてを比較できなくなります。AIはその膨大な情報を整理し、選択肢を絞り込む役割を担います。つまり、これからは検索結果の上位に表示されるだけでなく、AIが紹介する候補に入れるかどうかが重要になるのです。

セミナーでは、葬儀関連の広告クリック単価の高騰や、「家族葬」「直葬」の検索増加も紹介されました。私はここに、葬儀業界が抱える課題を感じました。広告費を増やして集客する従来の方法には限界があります。一方で、価格競争だけに走れば、葬儀本来の価値まで失われかねません。

では、葬儀社は何をすべきでしょうか。

私は、まず自社の強みを具体的な事実として発信することだと考えます。料金の目安、対応できる葬儀の内容、実際の施行事例、地域との関わり、お客様から寄せられた声などです。「安心・丁寧」という抽象的な表現だけでは、他社との違いは伝わりません。AIにも人にも理解できる情報を積み重ねることが、これからの信用につながります。

ただし、AI対策そのものが目的になってはいけません。葬儀は一般の商品とは違い、ご遺族の不安や悲しみに寄り添う仕事です。AIが情報を整理することはできても、ご遺族の表情を読み取り、適切な言葉をかけることまで任せるべきではありません。

私は、AI時代だからこそ、人間にしかできない仕事の価値が一層高まると考えています。情報発信や事務作業はAIを活用し、そこで生まれた時間をお客様への対応に充てる。この発想が大切です。

私たち葬祭用品卸業も同様です。単に商品を供給するだけでなく、葬儀社がどのように選ばれ、どのような価値を提供できるかを一緒に考える必要があります。

AIによって葬儀の本質が変わるわけではありません。しかし、その価値をお客様に届ける方法は確実に変わります。新しい技術を取り入れながら、人に寄り添うという原点を守ること。 それが、これからの葬儀業界の発展につながると私は考えています。